大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)3208号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕土地に対する抵当権設定登記競売開始前に借地権の譲渡を受け、建物保護法による対抗要件を備えた借地人は、その借地権をもつて土地の競落人に対抗することができる。

〔争点〕本件土地はもと訴外大東物産株式会社の所有であつたが、大東物産は昭和二九年一二月二八日本件土地について訴外第一信託銀行株式会社に対し債権極度額を三〇〇万円とする根抵当権を設定し、昭和三〇年一月二一日その設定登記手続を経た。一方、右根抵当権設定登記より以前の昭和二八年一二月二〇日、大東物産は本件土地中第一の土地を訴外東洋高圧株式会社に対し普通建物所有の目的で賃貸し、東洋高圧はその上に本件第一の建物を所有し、その所有権保存登記を経ていたが、昭和三二年一一月中に、東洋高圧は大東物産の承諾を得て、本件第一土地の借地権とその地上の第一建物を被告に売却譲渡し、被告は同月二一日右第一建物の所有権取得登記を経た。その後昭和三五年一二月二四日、第一信託の申立により根抵当権実行による競売手続が開始され、昭和三六年九月二八日原告両名が本件土地を競落して所有権を取得した。本件土地所有権に基く被告両名の建物収去土地明渡請求に対し、被告は本件第一土地につき前記借地権あることを抗弁したが、原告らは、被告が右第一建物に対する所有権取得登記を経たのは本件根抵当権登記の日より後日付であるから、被告は右借地権をもつて本件土地の競落人たる原告らに対抗することができないと争つた。

右の点につき、判決は次のように説いて原告らの主張を斥けた。

〔判決理由〕……右に認定した事実によると、東洋高圧は第一土地に対し本件抵当権設定の登記前から借地権を有し、かつ右借地権について建物保護法による対抗要件を具備していたことが明らかであるから、本来、東洋高圧の右借地権は、本件土地の抵当権者及び競落人たる原告らに対抗し得べき性質のものであつたことは明白である。他面、右の認定事実からすれば、被告は右東洋高圧の有していたのと同一性のある借地権を承継取得したものというべきであり、かつ被告は右借地権承継の当時、その地上に存する第一建物について所有権取得登記を経由しているから、右借地権承継の点についても、建物保護法による対抗要件具備の手続を了したものというべきである。ところで、被告が右借地権を譲り受け、かつその地上の第一建物について所有権取得の登記手続をした時には、すでに右土地に対し本件抵当権の設定登記が存していたことは、前記認定に照らし明らかである。そこで本件においては、そもそもこのように抵当権設定登記後に借地権を譲り受けた場合においても、被告は本件土地の競落人たる原告らに対抗できるであろうかという点が一応問題となるであろう。よつてこの点について検討するに、元来、抵当権は目的物の有する担保価値をその抵当権設定当時の状態で把握することを本質とする権利であるから、その登記後、抵当権の目的物に対しこれが担保価値を減少させるような法律関係を創設した場合、それらは後日、抵当権の実行による競売が行われた暁には、競落人に対する関係では原告としてすべて覆滅され、競落人に対抗できなくなるものと解すべきことは、当然である。(民法三九五条による短期賃貸借の保護は、この原則に対し、法が特に認めた例外と解される)しかしながら、本件のように抵当権設定登記後単に既存の借地権を譲り受け、かつこれについて建物保護法所定の対抗要件具備の手続を採ることは、右の場合に当らないものと認めるのが相当である。つまり、既存の借地権の譲渡はなんらその土地に対して新たな物的負担を加えるものではないし、かつ一般に借地人の変更があつたということだけでは、当然にはその土地の担保価値が減少するものと断定することもできない筋合であり、他面、借地権の付着した土地の競落人は、当初からその土地に借地権の負担の存することを予期している筈であるから、結局、本件のように抵当設定の登記後になされた借地権の譲受は、右譲受について建物保護法による対抗要件を具備している以上、これをもつて競落人に対抗し得るものと解してなんら妨げないものと考える。(尤も、借地権の譲受及びその対抗要件具備の手続が、すでに抵当権の目的土地について競売が開始され差押の効力が生じた後になされた場合は別論であるが、被告は、前記(1)の(ロ)において認定したとおり、競売手続開始前に本件借地権を譲り受け、当時地上建物について所有権取得登記を経由していたのであるから、本件においては、この点は問題とするに足りない。(土井王明)

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